写真を撮っておけば後で名前が判るだろう・・皆さんはそんな風にお思いでしょう。確かにアングルやズームを変えて数枚撮っておけば、後で図鑑を見ながら同定することができる花も多いです。
しかし、実際にフィールドで見て触って・・写真だけでは判別できない微妙な特徴の違いしかない花たちも数多いのです。ここではFlowersGuideの掲示板などでもよく質問される特に見分けの難しい花たちについて、ネットや図鑑などを見比べて調べた判別方法を判りやすくまとめてみました。
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■トキワハゼとムラサキサギゴケ
トキワハゼ ムラサキサギゴケ
トキワハゼ ムラサキサギゴケ
花の姿は良く似ていますが、大きさは違います。個体差もあることでしょうが、トキワハゼは1cmくらいと小さく、ムラサキサギゴケは1.5〜2cmとトキワハゼよりひとまわり大きいので慣れてくるとすぐ判ると思います。ひとつ歴然と違うのは、ムラサキサギゴケは横に這う茎(ランナー)を出しますが、トキワハゼにはありません。
花の時期はトキワハゼは4月〜10月、ムラサキサギゴケは4月〜6月ですので、夏〜秋にかけて見つけることができるのはトキワハゼです。また、ムラサキサギゴケは比較的湿ったところを好みます。

■ほとんど見分けが付かないタツナミソウの仲間
シソバタツナミソウ ホナガタツナミソウ
シソバタツナミソウ トウゴクシソバタツナミソウ ホナガタツナミソウ
林の中にひっそりと咲くタツナミソウ。どれも良く似ていますが、なかでもシソバタツナミソウ、トウゴクシソバタツナミソウ、ホナガタツナミソウの3種はほとんど見分けが付かない。花の形はほとんど一緒、色もほとんど一緒、葉も形状はほぼ同じで赤紫の斑紋の入るものと入らないものがあり、個体差も大きいので同じ種でも全く違う姿に見えたり・・見た目には全く区別が付かないと言ってもいいでしょう。
違いの比較的明らかなのは茎の産毛の様子。シソバタツナミソウは短い上向き、ホナガタツナミソウは下向き、トウゴクシソバタツナミソウはホナガタツナミソウよりも長い毛で下向きだといわれていますが・・産毛の向きまで判るような写真は、マクロで可能な限り近づいてよほどの倍率で撮影していなければ撮れないと思いますので、おそらくコンパクトデジタルカメラでは判別が可能な写真は撮ることが難しいと思います。
花の時期と分布はシソバタツナミソウが5月〜6月で本州・四国・九州、ホナガタツナミソウが6月で本州(中国以北)、トウゴクシソバタツナミソウが5月〜7月で本州(中部以北)。
6月にはこの3種が入り乱れて咲く地域もあることでしょう。植物の名前を調べるにはフィールドに図鑑を持って行って実際の花と見比べることが確実だと思いますが、これではフィールドで同定することすら難しいと思います。
しかしかろうじて5月の早い時期に四国や九州でこの種の花を見かけたらシソバタツナミソウ、7月に中部以北で見かけたらトウゴクシソバタツナミソウだと言えそうです。
う〜む・・この植物の区別を最初につけた人はよほど目の良い人なのだろうか?^^;

■キジムシロとミツバツチグリとツルキンバイ
キジムシロ ミツバツチグリ ツルキンバイ
黄色い花は良く似た花が多く判別が難しい。特に判別の難しいのはキジムシロとミツバツチグリとツルキンバイ。良く似たところに咲いていて、花の時期も同じ、しかも共生していることもしばしば・・
3種とも花びらは通常は5枚ですが、四葉のクローバーのようにたまに6枚あるものもあり、花の形もそっくりです。
キジムシロの小葉は5〜9枚、ミツバツチグリは3枚と、ネットで調べるとよく出てきますが、実際には密生していることが多く、葉の数を調べてみるのはかなりの困難です。
でも葉の形状や産毛の有無などの特徴は少々違いますので、葉と産毛で判別するのが確実かもしれません。
キジムシロは全体に荒い毛があり葉っぱの脈の凹凸が深い感じがします。ツルキンバイは細い毛がまばらで葉の裏にも毛があり、ギザギザの切れ込みが他の2つに比べて深いです。ミツバツチグリの葉っぱはなめらか。そんなイメージで観察してみましょう。
またツルキンバイは本州では関東以西に咲きますので、関東以北の地方でこれらの黄色い花を見つけたときには、キジムシロかミツバツチグリに絞られると言えます。

■アマドコロとナルコユリ
アマドコロ ナルコユリ
アマドコロとナルコユリは見分けが難しい。花も葉っぱも見た目はほぼ一緒で同じようなところに咲くことが多く、花を楽しむ方々を悩ませてくれる花です。
花が1〜2つづつ付くのがアマドコロ、2〜5個付くのがナルコユリだとも言われますが、環境によっては1〜2個しか付かないナルコユリも存在するのでタチが悪い・・。葉っぱはナルコユリの方が細い・・という記述もネットで調べているとよく見つけることが出来ますが、生育環境で個体差がありますので確実ではないと思われます。
茎の断面が丸いのがナルコユリで縦に筋が入り角ばっているのがアマドコロ・・というのが一番見分けが付けやすい特徴だと思われます。実際に茎をじっくりと触って確かめてみましょう、微妙にゴツゴツと茎の凹凸を感じるのがアマドコロ、スベスベで滑らかなのがナルコユリということになります。
また花の時期はアマドコロは4月〜5月、ナルコユリは5月〜6月。地域差はありますが、4月の早い時期ならアマドコロ、6月の遅い時期ならナルコユリに同定できそうです。
北海道ではナルコユリは確認されていないようですので、北海道でこの花を見つけたならアマドコロだと同定できます。
近似種のホウチャクソウは枝分かれしますのでアマドコロやナルコユリとは見た目に違います。他に似たものにヒメイズイというのもありますが、こちらは茎が直立しますので判ります。
山野草のショップで販売されているナルコユリは実はほとんどがアマドコロだという話を聞いたこともあります。そうなればもう全てをひっくるめてナルコユリでいいんじゃないかと思ったりも・・。(笑)



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